「天才作家の妻」公開記念試写会 イベントレポート

いよいよ1月26日(土)に公開を迎える映画『天才作家の妻 -40年目の真実-』の公開を記念して、本作にぴったりのクリエイティブな女性お二人をお招きしてトーク付き試写会を行いました。女性の共感!あるある!が詰まったトークの内容をレポートいたしますので、是非ご覧ください!

「天才作家の妻 -40年目の真実-」トーク付き試写会
ゲスト:地曳いく子さん(スタイリスト)、立田敦子さん(映画評論家)

立田 私はこの映画を昨年の9月に見たんですが、本当に面白いと思ったんですね。映画界では、去年の#MeTooというムーブメントを皮切りに、女性の権利や地位を向上させようという流れがありますが、それから一年経ち、こういう映画がついに登場したのか!と感激しました。それで本を一緒に出しました地曳さんに是非みてほしいと勧めまして、気に入ってくれたので一緒にお話ができればと思います。早速ですがご覧になった感想はいかがでしたか?

地曳 この映画の舞台が、1990年代ですね。60年代、70年代に女性解放運動というのがあって、女性が解放されながらもまだまだ男女差というものがあった時代です。そんな時代を重ね合わせて映画を観ると、すごく面白いですね。

立田 この映画では、カップルが出会ったのが1958年、ノーベル賞を受賞したのが1992年という設定なんです。(90年代は)バブルもあって、もう女性の権利は確立していたと錯覚していた時代ですね。でも、今思えばそれから25年以上も経っているのに、たいして進んでないですよね。

地曳 それで去年のアカデミー賞などで出てきたのが#MeToo問題。実はセクハラ・パワハラを受けている人たちがいた。21世紀なのに!

立田 グレン・クローズが演じているジョーンという奥さん、私は本当に彼女の気持ちがよく分かったんですが、男性が中心で世の中が動いているというのが当たり前で、なんの疑問も議論もなく、結婚したら夫の名に変えていた。当時は、誰だれの奥さん、という地位が“いちばんの幸せ”という価値観がありましたね。女性が生き残っていく上には、それは普通のことと考えられていた時代です。

地曳 ジョーンはスミス大ではなく、ハーバードとかに行けたセンスも知性もあったかもしれない。でも、その時の常識としては女子大のスミス大に行くのが普通だったんですね。そして30歳そこそこで女子大の教授をしている未来の夫ジョーも、偉そうにしちゃってね!

立田 彼女たちの時代では、奥さんが夫を支える側に回ってファミリービジネスで成功していくっていうことが当たり前だった頃ですね。それに何も疑問を持たずに来た人は日本でもとても多いと思います。でもこの映画を観ると、それに気づくってことが実はとても大切で、今、それに気づける時代がやっと来たんだなと。

地曳 みんな心の中では思っていたんですよ。フェアじゃないなって。もちろん男性を立てて生きるというのも、一つの道だしそういう才能もあると思うんですよ。でもそうじゃない女性が辛かった。

立田 ほんとですよね。この作品は夫婦の話でも結婚の話でもあるんですが、英語のタイトルが「THE WIFE」と言うように、「妻」いうのはどういうものなのか、というのを改めて考えさせられる映画だなと。

地曳 「妻」にファーストネームはないんですよね。子供がいたりすると「誰々のママ」って呼ばれちゃうじゃないですか。タイトルからして深みがありますよね。

立田 脚本も本当によくできていて、冒頭に受賞の連絡が来た後ホームパーティーのシーンがあるんですが、そこで夫が「うちの妻です。彼女と結婚できたことが自分の人生にとって最大の成功です」とスピーチするんですね。これって、ウィンストン・チャーチルの言葉なんですが、このセリフが映画の最後に響いてくる。そんなところがこの脚本の面白いところだなと思うんです。夫はフロントマンとしては才能があったと思うし、妻も初めから虐げられていたわけではないからDVではない。好きで結婚して、愛もあった2人が歩んでいくうちにずれてきてしまった。女性の権利というものが対等でないということに気づいてしまった。

地曳 ノーベル賞を受賞してなかったらそこまで気づかなかったかもしれないよね。

立田 この映画は旦那さんを攻撃する話ではなくて、妻の気付きの話だと思うんです。この作品では、ノーベル賞作家という設定になっていますけど、こういうことって普通の家庭の中でも、夫婦で商売をしていたり、共働きをしているご家庭なんかでありうるパワーゲームだと思うんですね。すべての夫婦にとって普遍的な話なんだなと感じました。そして、この映画の素晴らしいのは、いくつになっても気付きというのが大事で、それが30歳、40歳じゃなくて、60歳になっても自分の人生に気づく、というのが大事だと教えてくれるところ。今の時代だったら出来ると思いますし、そういう可能性を見せてくれる終わり方だったなと思いました。グレン・クローズはアカデミー賞では必ずノミネートはされると思いますね。受賞でも本命でしょう。

地曳 (グレン・クローズは)今71歳?すごいよね。

立田 ハリウッドでは熟年の女優がパワー全開。15年前くらいにロザンナ・アークエットがとったドキュメンタリーがあって(「デブラ・ウィンガーを探して」2003年)その中では40歳になったらハリウッドでは仕事がないといっていたくらいだったのに、今は、ジュディ・デンチなんて80歳すぎて主演を張って、熟年の女優が賞レースに参戦するようになった。ここ10年で本当に変わりましたね。グレン・クローズもアカデミーに6度ノミネートされていますが(※イベント後に本作で7度目のノミネートが決定)、まさか10年前は今またノミネートされて有力候補になるなんて本人も思っていなかったと思うんですよ。

地曳 ほんとですね。そしてスタイリストの立場でいうと、90年代というのは大人のファッションの成熟期だったんですね。カルバンクラインとかラルフローレンとかアルマーニとか、いちばんいい時だったんですよ。なので、ジョーンの大人ファッションも素敵でしたね。今流行りのグレーヘアーだし。ショートカットがとてもよく似合っていますね。そういったファッション的な観点から見てもとても面白いです。年をとったら肌を出さずにこうやって着ればいいんだ、ととても勉強になりました!

立田 グレン・クローズのゴールデン・グローブ賞のドレスも素敵でしたし、アカデミー賞も楽しみですね!

【PROFILE】
地曳 いく子 (じびき いくこ)「non・no」「MORE」「SPUR」「MARISOL」「éclat」「Oggi」「FRaU」などのファッション誌で30年以上のキャリアを誇るスタイリスト。「50歳、おしゃれ元年。」を皮切りに、「服を買うなら、捨てなさい」「ババアは辛いよ アラカン・サバイバルBOOK」(共著)「おしゃれ自由宣言」(共著)など話題の著書多数。テレビ、ラジオ出演、セミナー講師など多岐にわたって活躍中。

立田 敦子 (たつた あつこ) 映画ジャーナリスト/評論家。映画批評や解説、インタビュー、映画祭レポートなどを雑誌やweb、TVなどなどさまざまなメディアで展開。地曳いく子さんとの共著に『おしゃれも人生も映画から』(中央公論新社刊)。カルチャーメディア「Fan’s Voice」主宰。

★地曳さん、立田さんの共著「おしゃれも人生も映画から」
http://www.chuko.co.jp/tanko/2018/09/005120.html

幅広い映画についてお2人が語っている、楽しい1冊です!
ぜひご一読下さい。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です